pegawa's blog

昔 ピープルという ビデオレンタル屋がありました 都築さまより<a href=http://roadsidediaries.blogspot.com/2009/11/blog-post_11.html>ビデオ・スターの死</a>

レンタルビデオ物語 その16

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その年は、やたらと雨が多い年であった。

「ピープル」の経営者になって数年目。
売上はジワジワと悪くはなっていたが、それなりな毎日。


営業時間が夜中2時までだったので床に入る時間が朝6~9時だった僕は、
休みの日はいつも午後の2時3時まで寝ていた。
ある公休日の午後、我が家でいつものように惰眠を貪っていた僕を電話が襲った。
「ピープル」のバイトからの連絡!
「店が真っ暗になった!」
多少遅れる事もあったが、電気代はキチンと収めていたのでたぶん止められたわけではない。

表を見ると土砂降り!
ピープルは古い建物とはいえ、
まがりなりにも鉄筋コンクリートのビルなので多少の雨ではビクともしないはず!
いままで雨漏りもなかった。

事情を聞いてみると
「スゴイ音がして光ったと同時に真っ暗になった」
と言う。
なるほど、カミナリである。

あわてて店に駆けつけるとブレーカーが落ちていた。
それをあげると灯りは復活したのだが、
でも店のレジのコンピューター、テレビ数台、あと複数あった電光の看板類がダメになっていた。
黒い焼け焦げがあった・・・・。

レンタルビデオ「ピープル」の入っているビルは、
江戸時代作られた水道の名残である水道道路沿いにあったので、結構高台にあった。
ビル自体も細長いながら5階ぐらいの、周辺ではわりと高めの建物だったのである。
でも、まさかカミナリが落ちるなんて・・・・。
あとで判ったことだが店の前の電柱に落ちたらしい。

ビックリしてるだけでは、経営者失格である。
保険に入っていた!
いい加減ながら、店舗用の火災保険に入っていたのである。
その規約を読んでみると、カミナリにも適用される保険であった!
早速、写真を撮って手続きをしたら、幾らかのお金がおりることになった。

そこで、頭に電灯がついた!
ここでこのお金を元手に、アレを作ろう!

前大阪にいった時、繁華街のレコード屋さんで見た看板!
そう、「キングコング」が壁よじ登っているブツ!

大阪に限らず、地方都市に旅行すると絶対にある立体看板!

昔は大久保にも、男女がチューしてる噴水なんて、頭がおかしいとしか思えない看板があった。

やはり中小企業経営者の夢ではないか!
どう考えても無駄なあの手の看板!
僕は憑かれたように看板に夢中になった、まわりは全く相手にしてなかったが・・・・。
ステキなのに・・・。

数件の業者にあたってみた。
が、見積もりはおろか、どこにも相手にもされなかった・・・・。
まあ、今考えると、それはそうであろうとも思うが・・・。

フィギュアの製作をしてる身内がいることを思い出したので、
相談してみると「数千万で製作可能」という。
「製作可能」!!
ラッキー!!
これで憧れの「キングコング」が窓よじ登って、
ジェット戦闘機(できればF104)をにぎり潰している」みたいな無駄の限りをつくした看板ができる!
煙が出るギミックがいいかしら?
それとも水が出るのは?
夢は膨らむ!

降りた保険金は数十万。
制作費用は数千万。
冷静に考えればその間には深くて暗い川があるのだが、僕の目にはもう完全に見えてなかった。
と言うか、借金をしてでも作るつもりだった。
あの70年代の終わりに『キングコング』をリメイク製作したギラーミンのような情熱!
ああああ、これで、近所もしくは全国の人から後ろ指を差される立派なダメ中小企業家になれる!
「人はこうやって選挙に出るんだろうなあ」
なんて夢にウツツをぬかしていた。

しかし・・・。
ある日電話がなった。
フィギュア制作をしてる身内から、僕の「キングコング」の話を聞きつけた親である・・・。
これ以上ないぐらい叱られた・・・・。
電話では済まず、わざわざ店まで来て、絶対作らないようキツく言い渡された・・・。
残念・・・・。

まあしかし当たり前・・・。
都内にちょっとした洒落た家がたつお金で、バカな息子が、
全国から後ろ指を指されるために看板を作ろうとしてるのである!

そのときは、「わからずや」って、小学生のようにスネたが。
いま考えると、タイヘン感謝している。
だって、意味ないもの・・・。

思うに、あれが僕にとってのバブルだったんだなあ~。
でも、これが「ロックンロ-ル」じゃない?